保守思想について

最近、根底に保守思想を帯びている人の言動には好感を覚える。また、その逆も言える。根底に保守思想を帯びていない人の言動には、落ち着きが無いというか地に足がついていないというか温かみが無いというか分かっていないなという感じがして共感できない。私の価値判断の基準になっているような気がする。ただし保守思想とは何かというとなかなか難しい。
もともと保守思想はフランス革命の急激な変革に対して、「ちょっと待てよ」今までの物を急激に捨ててしまっていいのだろうかという疑問を発端として、近代進歩主義に対するアンチテーゼとして生き続けてきた。近代進歩主義がまさに近代の進歩を推進してきたのは紛れもない事実で今後もこの勢いは強まることはあっても弱まることは無いだろう。
その中で科学技術の進歩による人間を取り巻く環境の変化と人間の気持ち、幸福感との間の乖離が歴史的にもその都度問題化して幾多の争いや妥協を経て現在がある訳だ。現在の世の中ではグローバリズムの進展と人間の幸福感との間の乖離が問題化している。

そうした状況下で保守思想は人間の気持ちの側に立つ。人間の幸福感から離れて何が進歩だと考える。人間の気持ちからかけ離れた大胆な改革にはまずは慎重になる。
幸福感を考える時に人は自分の感情に正直でなければならない。従って、自然な感情の発露である愛着の念を疎かにしない。人は身近で手に触れられるもの、直接目に見えるものに愛着の念を覚える。それは家族であり、ペットであり、日常的に使っている食器、服、時計や鞄であり、庭の梅の花であり、散歩コースの街並みだったりする。その気持ちは生まれ育った地域への郷土愛や国家への愛国心や自分の所属する学校や企業への帰属意識につながっていく。時間的に拡がると国家の成り立ちから現在までの経緯や先人たちの営みという歴史意識が芽生えてくる。こういう愛着の念は日頃難しい事は考えないあまり本を読まない庶民大衆も無意識のうちに抱いているものだ。
大事な点は保守思想は近代進歩主義の改革の波が押し寄せる中でこの愛着の念を意識的に大事にするということだ。この愛着の念は万人に共通なのだがともすれば頭でっかちなインテリは理念や理屈に酔ってしまって、現状打破の為には日常生活に伴う感情は捨てなければならないと考えたり、本人の生れてからの生活史の中で形成されたいわば本人を本人たらしめている変える事の出来ない感情面の特徴に自身で気付かずに本人の特性から遊離してしまった主義主張にのめり込む場合などが見られる。保守思想はこういった有害な理性の迷走に待ったをかける。

保守思想はまた、浮ついた改革より継続している制度や慣習を重視する。現在残っている制度や慣習は、人類が長年にわたって試行錯誤を繰り返した結果残っているものだから存在価値はあるはずだ、とまずは考えて急激な変革には慎重だ。だが、改革という試行錯誤がより良き制度や慣習を確立してきたのも事実である。だから、存在する制度や慣習にはまずは存在意義があるはずと考える半面で、本当に存在意義があるのかという不断のチェックとそれに対する改革志向も欠かすことは出来ない。残すべきものは何か、変えるべきものは何かという問いに対して、保守思想は「古きを訪ね新しきを知る」を踏まえているかと考える。これが性急な改革に対して「ちょっと待てよ」の慎重さにつながるのだ。

保守思想はまた、近代進歩主義が理性は感情に対して優位にあると考えるのに対して、感情が理性に対して優位にあると考える。近代進歩主義がともすれば頭でっかちで理屈をこねまわして理念を主張するのに対して、保守思想は日常生活における生活実感を重視する。読書から学ぶ思想や理念は勿論大切だが、生活において時々に湧き起こる感情のエッセンスすなわち直観をより重視する。このことは近代進歩主義を支える科学を考える時納得がいく。
科学は合理的な思考によって客観的な結論を導き世界の進歩発展に寄与してきたのは疑いの無い事実である。私が以前疑問に思ったのは、例えば経済学という学問において何故学説が幾つも有るのだろうという事だった。分かったのは、科学が客観的なのは過程すなわちプロセスの部分であって、客観的なプロセスを進める対象である仮説部分は何の客観性も無く科学者一人一人の個別特殊な個性によるという事だった。つまり、当然その分野におけるそれまでの研究成果は踏まえるとしても、自分の研究の仮説は自分の生活史を通した直観という感情面から導き出していたのだ。その普遍性を信用できるのは研究実施のプロセス段階で物的証拠が必須となる自然科学分野の話である。人文科学分野では方向性を決める感情面がプロセスを制御する理性より上位にある訳だ。

保守思想のきもは歴史意識だ。現在に生きる自分を過去に思いをはせることで、先人達の行為や言動があって現在の自分があると考え、先人たちの叡智の結集である常識を重視する。保守思想は改革を拒否したり、消極的なわけではない。ただ考察に当たっては、常識という先人からの手紙を読み、自分の感情を内省し上滑りの無い判断を下していく、結果は自ずとモダレートなものになる。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック